中国万事通

プーアル茶と、中国語を話さない外国人(下)(大理のプーアル茶)~ 大理 その8

2017/09/11

(上編からの続きです)

○買い物と外国語コミュニケーション

僕はおばさんがどうしてこんなに不愛想なのかよくわからなかった。 中国の接客は基本的に不愛想なのだが、 いくら不愛想といえども、お茶を飲みながらしばらく話すという状況では、 もう一つ表情が動いてもいいものだと感じていた。

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(値段が高い茶。上のものは1枚 2,680元(約4万5千円))

そんなことを考えながら、僕は店に入ったときの最初の会話を思い出していた。 まず、おばさんがどんなお茶を探しているかと尋ねてきた。 僕はお茶の形容詞はあまり知らなかったので、 「黑色的(黒っぽい色のやつ)」「我喜欢喝浓厚的普洱茶(濃い味のプーアル茶が好き)」 と答えていた(今思うと、濃厚は「浓厚」より「浓郁」のほうがいいよな)。

それを聞いたおばさんは、無表情のままわーっと早口で何かを話していた。 おそらく、お茶のブランド名をたくさん話していたのだと思う。 固有名詞はそのブランドを知っていないと聞き取れないので、 よくわからないということを伝えた。 すると、「まあ、とりあえず飲んでみて」と中に促されたのだ。

席に座ると、「どこの国の人?留学生?」と尋ねられる。 大理では日本人と答えると、いつもいったん眉をひそめられる。 それを経験していたので、試しに「旅行できてる韓国人だ」と答えてみた。

すると、おばさんは相変わらず眉をぴくりとも動かさず、 「韓国人は珍しいですね。韓国語の音は聞いてて好きですよ」 とわりと好意的に答えてくれたので、 「そうですか、ありがとう。僕は中国の文化とか歴史が好きですよ」と言った。 それにもおばさんは笑顔を見せず、会話はお茶の説明に移ったのだった。

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(小分け用のお茶。キャンディのような見た目)

そんなことを思い出していると、一つ目のお茶の試飲が終わった。 これはおいしいものではあったが、僕が望むほど濃いものではなかった。 このため、もっと濃いのを飲んでみたい、とおばさんに伝えた。

二つ目に試飲させてもらったものは、先ほど上に載せた写真のものだ。 三煎目で、「土臭い」とまで形容できるほど十分濃い風味がした。 これは僕の好みだった。

「これはおいしい!すごく好きです」と言いながら、 プーアル茶について気になることがあったことを思い出したので、 せっかくだからと思い、質問してみた。 「他のところで飲んだプーアル茶で変わったものを飲みました 味が薄めで色も透明だったけど、あれもプーアル茶と言われました。 このお茶とはどんな違いがあるんですか?」

すると、おばさんは、 「プーアル茶は、発酵させてないものと発酵させたものがあるんです。 発酵させてないものは緑茶のような色で味は薄く、 発酵させたものは色が濃い茶色になります。」 と不愛想なまま答えてくれた。

それは知らなかった。 「発酵させてないものは緑茶みたいで、 発酵させると色と味が濃くなるんですね~」と答えたところ、 初めておばさんの表情が動いたw

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(喫茶店で飲んだ発酵させていないプーアル茶)

おばさんは話し始めた。 「じゃあ、やっぱり私の説明は理解してたんですね」 本当はわからない用語もあったけどな~。 このやりとり2回目やん、と思いながら、 「だいたい聞き取れましたよ」と答えた。

すると、「ここに来る外国の観光客は、中国語が全然できないんです。 だから、あなたみたいにちゃんと理解してくれる人は珍しいですよ」 とおばさんは言った。「中国語、上手なんですね」

う~ん。なるほどなぁ。お茶というものは、飲んでみないとわからない。 おばさんは英語はできないので、 中国語がわからず味にこだわりのない観光客は 「飲めればなんでもいい」という心持ちなのだろう。

お茶は、お店に陳列されているだけでは、一見してどれがいいのかわからない。 産地や風味、色や生産者などの説明を聞き、読み、 その上で実際に味わってみて、選ぶのが普通だ。 母国のお茶専門店で茶葉を買うなら、みんなそうしているだろう。

しかし、ここは中国である。 そして、中国語を理解する外国人は多くない。 おばさんは説明しても、説明を受けるほうは何を言っているのかわからない。 中国語のわからない客は、自分の好みすら伝えられず、 適当に飲んでみたお茶を買うのだろう。

客の要望を聞き、売り手がそれに合うものを売るという 商売上の基本ともいえるコミュニケーションは、そこにはない。 もしお茶にこだわりのある売り手ならば、 それをもどかしく思うだろう。

やはりお茶を味わう人には、その人の好みのものを楽しんで欲しいと思うし、 お茶はお土産用に買われるため、その人が帰国しても また大理を思い出すきっかけにもなる。

おばさんがそこまで考えてお茶を売っているかはわからない。 これは僕の個人的な創造である。 おばさんは相変わらず無表情だった。 けれど、「中国語、上手ですね」といったとき、 おばさんの口元が少しだけ緩んだような気がした。

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(二つ目のお茶は「誠信」。250元(4,000円)ほど)

さらに濃いものもあるのかなと、もう一つ試飲をさせてもらった。 それは土臭さは影を潜め、自然の甘みが強く感じられた。 値段は500元(8,000円)ほどで、値段の高さも相まって気が引けたので、 二つ目に試飲させてもらったものを購入した。

一般的な中国人は英語を話せない。 「Yes」「No」すらも、何を言っているのか理解できない人も少なくない。 麗江のゲストハウスで、欧米系の旅行者がそれをグチっているのを聞いた。 「中国人ってホントに何も英語を知らない。 ちょっとでも英語で話しかけると、すぐ顔を背けて相手にもしてくれないから困る」

そのとき、僕は「世界は英語だけで回ってないんやで」と思って聞いていたが、 その反論も的を射ていないよな~ともやもやした違和感を感じていた。

しかし、このお店でお茶を買い、おばさんの話を聞いて、そのもやもやが氷解した。 「せっかく中国にいるんだから、英語だけで意思を押し付けるだけではなく、 せめて簡単なのでもいいから中国語を学ぼうよ。YesやNoくらいでもいいから」

と、英語圏、中国語圏以外のところに行くときは、 僕も気を付けないとな~と、自分への戒めにもしつつ、 この辺で筆を置くことにする。

次回は、大理博物館に行った時のことを書きます! 雲南省の反日の理由がここにあった!?

おしまい。


えもん

えもん 大学では文学部に行きたかった都内IT企業のエンジニアです。
Twitter: @koneko_mc