中国万事通

多文化共存のかたち(官渡古鎮:下/昆明4)

2017/09/24

(官渡古鎮の金剛塔)

○東南アジア?中国?国境の境目で。

碁石展示館を後にして、官渡古鎮の広場に向かって進んでいく。 官渡古鎮は意外と広い。小腹が減ったので、香辛料をまぶしたイカ焼きを買って食べる。

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イカなのに色が赤い。香辛料がたくさんまぶしてあるのでかなり辛い。 串は長く、イカの量は小腹を満たすのには十分だ。2本セットでしめて10元ほど。

石畳の広場の中心には人工的に整備された小川がある。 小川をまたぐ形で東屋が作られており、周りには草や木が植えられている。 東屋には石のベンチが設置されており、近所のおじいさんたちの憩いの場となっている。

官渡古鎮の南側出口では、マイクとスピーカー、そしてステレオが置かれており、 青空カラオケ大会が開かれている。マイクは2本だけにもかかわらず、 結構な人だかりで、30人くらいは観客がいたように思う。 僕が通りかかったのはちょうど1曲終わるころだった。

曲が鳴りやむと、今までマイクを持っていた人が別の人にマイクを渡す。 完全挙手性の自由参加型だ。観客の中から男女一人ずつ出てきてマイクを握った。 やはり人数が多く恥ずかしいのか、二人とも少しはにかんでいる。

しかし、いったん曲が鳴り出すと、朗々たる歌声の華麗なデュエットが始まった。 周りの観客たちも「おおっ」と感嘆の声を上げている。 博物館へ行けなくて気落ち気味だった僕も、歌声に勇気づけられた。 ○東南アジアの仏教の残り香

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官渡古鎮の広場の南側には、少林寺があった。 しかし、これは少林拳で有名な少林寺ではない。 僧侶が体恤を修行とするあの有名な少林寺は、中国の河南省にある。 このお寺は小ぢんまりとしたところで、特筆するところはなかった。もしかしたら何か見落としがあるかもしれない。一人旅では重要スポットを見逃す危険がある。こういうときにガイドの重要性が身に染みる。

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少林寺の正面には、二つの塔がすっくと立っている。 「妙湛寺(みょうじんじ)東棟」と名前がついている。 曰く、元の元貞年間に建設が始まり、初めは東西セットだった。 しかし、清の道光十三年(1833年)に自信があり、東塔だけとなってしまった。 塔の上の鳥にちなんで、「金鶏塔」とも呼ばれているとのことだ。

注目すべきは仏塔の形である。これは、大理の三塔や一塔と同じだ。 大理が滅びて数百年経っても仏塔の建築様式が変わらないことに、文化の根強さを感じたのだった。

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東塔の向かいには、金剛塔が位置している。 この金剛塔を挟んで、西塔が立てられていたのだろう。 その居住まいは、タイやカンボジアの仏教寺院に並べられていても遜色ないように思える。

説明を読んでみる。 「妙湛寺金剛塔は、俗に穿心塔といい、明の天順二年(1458年)に建造された。 金剛宝座式のカテゴリに分類され、全体は砂岩を削りだして作られており、密教の金剛界五部の内容を表現している。 元代以降の密教の建築芸術を研究するに当たり、重要な意義を持つ建築である」 仏教の中でも密教の塔ということだ。

先ほどの東塔の後に、この金剛塔を見て、僕は不思議な感動を覚えた。 大理で見てきた東塔のそばに、タイで見るような仏塔がある。 そして、その近くには、中国式の少林寺がある。

各地に広がる文化が仏教の名の下に、この地で一堂に会した。まさに壮観である。 僕は中国の都市の魅力は、その重層性にあると思っている。 博物館や遺跡に赴くと、各時代の特色がはっきり表れており、 かつ性格が大きく異なる遺物に出会うことが多いからだ。 官渡古鎮の仏塔は、時間という軸に、さらに地域性という味を加えている。

この文化の共存は、雲南のこの地、この場所でしか見ることができない。 歴史中国の遺風が色濃く残る中原や長江周辺ではなく、様々な民族、歴史の交錯する周辺にあってこそ、 中華帝国の広大さ、そして境界の曖昧さに思いをはせるきっかけとなる遺物に出会うことができる。 まさに、辺境が作り出す奇観といえる。 東南アジア風でも中国。イスラム風でも中国。モンゴル風でも中国。ロシア風でも中国。 中国は多様で懐が深い。 次に旅をするなら、中国国内でありながら“辺境性”を感じさせる場所に行こう、と心に決め、官渡古鎮を後にするのであった。


えもん

えもん 大学では文学部に行きたかった都内IT企業のエンジニアです。
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